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<そこにはこの国の闇がある>自民党政権と不気味な宗教団体の怪しい関係(日刊ゲンダイ)

安倍元首相が銃撃されて亡くなった事件は「民主主義への挑戦」ではなく、宗教にまつわる恨みだったことが明らかになり、政治と宗教の関係がくしくもクローズアップされている。

 

 奈良市内で演説中の安倍を殺害した容疑で逮捕された山上徹也容疑者は、母親が旧統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)に入信して多額の寄付をしたことで家庭が崩壊。旧統一教会と関係が深い安倍を狙ったと供述している。

 

 事件の引き金になったのは、安倍が昨年9月に旧統一教会の関連団体である天宙平和連合(UPF)のイベントにビデオメッセージを送ったことだとされる。UPFは、旧統一教会創始者の文鮮明(故人)と、その妻で現在の旧統一教会トップ韓鶴子が創設した団体だ。

 

 動画で安倍は「世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」と話していた。

 

 これを見て、「絶対に殺さなければいけないと確信した」というのだ。

 

 11日に会見を開いた旧統一教会の田中富広会長は「友好団体との区別がついていなかったのではないか」とトボケていたが、それに反論する形で、旧統一教会による霊感商法被害の救済と根絶を目的に結成された「全国霊感商法対策弁護士連絡会(連絡会)」が12日に会見。安倍の動画について連絡会が問題視し、安倍事務所に「旧統一教会やその正体を隠した各種イベントに参加したり、賛同メッセージを送らないでください」と公開抗議文を送付していたことを明かした。

 

ジャパンライフと構図は同じ

 

 マルチ商法で多数の被害者を出し、詐欺罪に問われたジャパンライフは、安倍主催の「桜を見る会」の招待状を信用創出に利用し、荒稼ぎをしていたが、UPFへのメッセージも構図は同じだ。元首相がお墨付きを与えたことで被害者が増える可能性は容易に想像できる。しかも、旧統一教会系の「世界戦略総合研究所」など、同団体関係者も2013年から16年にかけて「桜を見る会」に招かれていた。

 

「統一教会とUPFが一体なのは周知の事実だし、そもそも、安倍元首相が率いた清和会(安倍派)と統一教会の関係が深いことは、政治記者ならみんな知っているはずです。統一教会の日本国内での組織化にあたっては、安倍元首相が敬愛してやまない岸信介氏が後ろ盾になった。当時は“反・共産主義”で一致していたからです。それ以降も、自民党の清和会の議員事務所を中心に、統一教会から秘書が送り込まれてきた。秘書として訓練されていて無償で働いてくれるから重宝されたのですが、彼らには明確な目的があった。まずは秘書になり、中枢の情報を入手して議員の弱みを握り、あわよくば自分も議員になるという組織的な戦略です。統一教会は霊感商法や合同結婚式などで日本で社会問題になった団体なのに、冷戦終結以降もその関係は維持されてきたということが、今回の事件で白日の下にさらされた。これは極めて重大な問題です」(政治評論家・本澤二郎氏)

 

 連絡会の調査によれば、百数十人の旧統一教会信者が公設を含めて国会議員の秘書になっていたこともあるという。給料は議員からもらわず、旧統一教会の関連団体である「勝共連合」から出ているケースが少なくない。

 

 そして、その関係性は第2次安倍政権が発足してから露骨になった。連絡会の山口広弁護士は会見でこう言っていた。

 

「統一教会と近い政治家は、安倍政権で大臣や副大臣、政務官に登用される傾向が顕著になった。統一教会と仲良くし、協力関係にあった方が早く出世できるという認識が浸透し始めた。これはマズいということで、全国会議員に反社会的団体である統一教会にエールを送るような行為はやめていただきたいと繰り返し要望してきた。安倍さんが統一教会と仲良くすることに開き直り、憂慮していました」

 

 その流れの中で起きた銃撃事件だったのである。

 

「タカ派」で嫌韓を煽りながら裏ではズブズブ

 

「安倍元首相は、表の外交面では韓国に強硬策を取って反韓感情を煽り、岩盤保守層の支持を得てきましたが、裏では韓国の宗教とズブズブだったわけです。本来なら“韓国第一主義”の統一教会とは相いれないはずなのに、選挙の集票や動員、献金などで世話になり、見返りにイベント出席など国会議員側からの協力でカルト宗教にお墨付きを与えてきた。安倍元首相を保守政治家と信じてきた人にとってはショックな事実かもしれませんが、タカ派と言われる議員ほど、統一教会と縁が深いことを直視すべきです。暗殺によってパンドラの箱があいてしまった。統一教会は海外ではカルト認定されている。カルトと手を切れるのか、自民党の体質が問われています」(本澤二郎氏=前出)

 

 日刊ゲンダイは以前から、安倍政権と宗教団体の怪しい関係を指摘してきた。それは旧統一教会にかぎらない。神社本庁と一体化した神道政治連盟(神政連)や、日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)が安倍政権で存在感を高めていたからだ。「安倍新内閣は“カルト内閣”だった」(19年9月18日付)では、党4役を含めると第4次安倍再改造内閣には日本会議議連の幹部が12人、旧統一教会と関係が深い議員も12人いることを報じた。

 

伝統的家族観や改憲で共鳴

 

「自民党の中でも清和会はとりわけ新興宗教との関係が深い。森喜朗元首相から小泉元首相、安倍元首相と清和系の政権が続く中で、宗教団体の影響力が増したことは否めません。安倍元首相の悲願とされた憲法改正は、自民党を支援する神政連や日本会議も強力に後押ししており、第2次安倍政権になってからは、神社に改憲啓蒙ポスターが張られるほど改憲運動は一体化しています」(自民党関係者)

 

 自民党が昨年、「憲法改正推進本部」を改称して発足させた「憲法改正実現本部」の役員にも日本会議議連の中枢メンバーが顔をそろえている。本部長に就任した古屋圭司政調会長代行は日本会議議連の会長、事務総長の新藤義孝元総務相は副会長だ。最高顧問は安倍と麻生副総裁。特別顧問は議連幹事長の衛藤晟一元沖縄・北方担当相である。

 

 もちろん、誰にでも信仰の自由がある。宗教が政治団体をつくることも違法ではない。しかし、特定の宗教の教義が与党の政策に影響を与えているとしたら問題だろう。

 

 自民党の憲法改正草案を読むと、「人権の過剰を是正し義務を示す」「9条を改め軍事力を明記する」「家族条項を盛る」など、安倍と近しい団体の主張と一体化していることが気になる。

 

 参院選の最中、神政連の合合で配られた冊子に「同性愛は精神障害で依存症」などとLGBTに対する差別的な内容が書かれていたことが発覚し、問題になったが、この会合で講師役を務めたのは韓国人のキリスト教学者だったという。

 

「かつては、統一教会などのイベントに国会議員が参加しても名前は伏せていたものですが、第2次安倍政権以降、双方とも隠さなくなった。国会議員が『統一教会系の組織が後援会をつくってくれた』と自らSNSでアピールしていたこともあるくらいです。しかも、統一教会と日本会議、神政連は家父長制という伝統的な家族観を重視している点で一致している。思想を自民党議員と共有し、共鳴し合っているということは間違いないでしょう。安倍元首相の不幸な事件は、大メディアが宗教との癒着をきちんと批判してこなかったツケという一面もあるかもしれません」(ジャーナリスト・藤倉善郎氏)

 

 安倍を取り巻く宗教は、こぞって個人の人権よりも「家庭」を重視する家父長制の信奉者であり、夫婦別姓や同性婚には反対している。そうなると、自民党政権の「こども庁」が急に「こども家庭庁」に変わったことにも因果関係を感じてしまう。政権与党の政策が特定の宗教団体、それもカルトに左右されるなんて、国民は本当にそれでいいのか?

 

 安倍襲撃事件は、宗教的な逆恨みで片づけず、これを機に自民党と不気味な宗教団体の癒着について、徹底解明すべきだ。